「科学的=まずは自分の体で試して確認する」は誤謬である→「科学的」とは何か?
これについてはてブしようとしたけど、文字数足りなかったのでメモ。
「科学的=まずは自分の体で試して確認する」は誤謬である
「科学的とはどういうことか」を考えさせられますね〜。ぼくは「外から流れてくる数字や言説を信じず、まずは自分の体で試して、確認すること」が科学的だと思うかな。そこから探求が始まるわけですから。自分のことばで語れるようになります。
ー イケダハヤト
注:私はイケハヤ師にTwitterでブロックされているのでソースは添付しません。
「外から流れてくる数字や言説を信じず、まずは自分の体で試して、確認すること」が科学的
これは誤りです。 なぜなら、人間の認知バイアスを全く考慮していないからです。
人間は思ったよりも、目の前のものを正しく認識できないのです。どうしてもバイアス(偏り)が認知の中に入ってしまいます。
例えば「自然にあるものは体によい」とか「伝統の長いものはよい」という言説は、あくまで価値観の表明でしかありません。正しく科学的(後述)に分析すると、むしろ有害であることもよくあります。
科学的とは?
では、正しい意味の「科学的」とはどういうことなのでしょうか?
まず、この問題を扱う学問は 科学哲学 とよばれます(厳密にはその一部門)。よって、科学哲学の本に(今現在の)答えが載っています。
参考: 科学哲学 - Wikipedia
(ただし、未だに結論が出ていない話であり、私も完璧には理解していません。なので、それを注意してください。)
私なりの要約を言えば、下記が「科学的」の第一義だと思います:
- 反証可能である(ポパーの反証主義)
- 反証可能性 - Wikipedia
- 「どのような手段によっても間違っている事を示す方法が無い仮説は科学ではない」と説明される
すごく簡単に言えば、
- 客観的なデータを出せ
- 結果を確かめられる手順を示せ
- 人間の主観に頼るな
- 間違いの指摘についてウェルカムでいよう (可謬主義)
ということだと思います。特に可謬主義は、科学以外での議論においても大切だと私は思います(改めて書きます)。
科学の歴史とは、「いかに人間の主観や認知バイアスを排除してものを見るか?」の歴史とも言えるかもしれません。
「自分は科学的な見方を正しくできる」「自分は客観的なデータしか信頼しない」
— すかいゆき / 藤原惟 (@sky_y) April 7, 2016
このように信じて疑わない人ほど、データにあっさり騙されてしまう。
なぜなら、「データは客観的だが、データの解釈は恣意的かつ主観的」だから。 https://t.co/yi7JrSjU2T
逆に、感性だけだと「限りなく本物に近いニセモノ」に引き寄せられてしまう。エコロジー思想からのニセ科学(生気論、いわゆる「波動」)はその例。
— すかいゆき / 藤原惟 (@sky_y) April 7, 2016
だから、インチキは「理性で証明」することで排除する必要がある。
「感性でつかみ、理性で証明する」
これが物事を正しく認識する方法だと思う。
ただし、反証主義には「判定が厳しすぎる」という欠点があります。例えば、下記は反証主義によると「科学ではない」とされます:
- 物理学の最先端分野:超弦理論
- 超弦理論 - Wikipedia
- 今世紀中に実証実験は不可能とされる
- しかし、多数の物理学者の認識としては、これは「科学として取り扱うべき議論である」とされる
- 漢方医学(中医学)の原典となる理論
- 『黄帝内経』や『傷寒論』など
- 中国医学 - Wikipedia
- 思想であるため、検証しようがない
- しかし、部分的には、客観的な臨床データ(エビデンス)で確かめられる範囲について「現代医学として認めよう」という考え方が最近では主流になりつつある(EBM; 根拠に基づく医療)
上記のような問題を乗り越えるために、有名な理論ではクーンのパラダイム論などが提唱され、厳密な「科学の定義」は修正されつつあります。
とはいえ、素人が「この言説は科学的かそうでないか?」という簡易的なチェック(スクリーニング)をするのであれば、反証主義(およびその欠点)だけ知っていれば十分だと思います。
参考:認知バイアスと処理流暢性について
認知バイアスに関する話として、ちょうどPodoronさんによる一連のツイートをまとめたところなので、ぜひ参照してください。
【分かりやすい=真実】
— Podoron (@podoron) September 12, 2016
「処理流暢性/processing fluency」=情報を脳が処理しやすいか否か,が人の判断に様々な面で影響を与える事が心理学研究で分ってきました。流暢性が高ければポジティブ,低ければネガティブ,な判断がされる認知メカニズムです。
「人は分かりやすい情報を好む」なんて,当たり前かつ直感的過ぎて学問的発見には思えませんね。しかし,研究者達が,
— Podoron (@podoron) September 12, 2016
●知覚的流暢性(perceptual fluency:フォントやコントラストの見やすさetc.)
●言語的流暢性(linguistic fluency/発音・単語・構文の難易度etc.)
— Podoron (@podoron) September 12, 2016
●概念的流暢性(conceptual fluency/関連話題・単語を事前に見聞きするetc.)など様々な条件を変えて実験した所,
この,流暢性=情報の処理のしやすさ,のみが人の判断を決定する訳ではありませんが,その様な認知メカニズムがある事,それが無意識に私達の判断に影響している事,は知っておいて損はないのではないでしょうか。
— Podoron (@podoron) September 12, 2016
上記を含むまとめ:
おすすめの科学哲学の本
科学哲学の本には色々なレベルがあるのですが、大学生が読めるレベルとして以下の本をおすすめします。
- 作者: 伊勢田哲治
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2003/01/10
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 177回
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科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)
- 作者: 戸田山和久
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2005/01
- メディア: 単行本
- 購入: 20人 クリック: 134回
- この商品を含むブログ (136件) を見る
- 作者: 中山康雄
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 単行本
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