私の #2020年ベストアルバム
音楽だいすきクラブさんの企画に乗って、今年の個人的なベストアルバム・ベストトラックを振り返ってみます。
「作品のリリース期間は2020年12月31日までです。2020年以前のものを挙げていただいても大丈夫です」とのことで、2020年以前のものも含みます。
ベストアルバム
Kaede / Lamp『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』
流線形 / 一十三十一『Talio』
RYUTist『ファルセット』
藤井風『HELP EVER HURT NEVER』
KOTONOHOUSE『Synchronicity』
早見沙織『GARDEN』
イヤホンズ『Theory of evolution』
the oto factory『カクテルパーティー』
Jacob Collier『Djesee Vol. 3』
ベストトラック
ヒプノシスマイク オオサカ・ディビジョン(どついたれ本舗)「あゝオオサカdreamin'night」
宝鐘マリン「Ahoy!! 我ら宝鐘海賊団☆」
夏川椎菜「アンチテーゼ」
婦人倶楽部「そいえば台湾」
サクラSAKURA-LEE「Sheマジカは、(Edit)」
YuNi「花は幻」
MJ Cole「Crazy Love」
オリジナル・ラヴ「プライマル」
キリンジ「エイリアンズ」
菅野よう子(作編曲)「Ray of Water」
個人的総評
今年の特に秋〜冬は、Vaporwaveに関係するジャンルをよく聞きました。
ヴェイパーウェイヴは、2010年代にインターネットのコミュニティを拠点に広まったジャンルで、おもに80年代の楽曲をサンプリング(引用・流用)して制作。その楽曲にはノスタルジックな心地よさもありながら、資本主義や大量消費社会に対する皮肉も込められているようです。そうした楽曲に、80年代の日本のポップスやフュージョン作品などが数多くサンプリング(引用)され、これをきっかけにサンプリングの「元ネタ」を捜索しはじめた人々が、往年の日本のポップスにたどり着く→原曲の素晴らしさに気づく→さらに同じ系統の日本のポップスを探し始める。という経緯で盛り上がっていったようです。
「なんか良いなー」と思った曲が、実はVaporwave由来だったというパターンが多かったです。
特にシティーポップは元々好きでしたが、「海外発で流行っている」というのは小耳に挟んでいた程度でした。
一方で、2〜3年前からVTuberが一大ムーブメントになり、今年は海外への進出も目立ちます。そんな中でたまたま見てた英語圏VTuberのGawr Gura(がうら・ぐら、通称サメちゃん)が、初配信で山下達郎の「RIDE ON TIME」を歌い出したのです。度肝を抜かれ「マジでシティーポップが流行ってるんだなあ……」と実感しました。
Vaporwaveにシティーポップ、そしてVTuber。元々それぞれブームにはなっていたのですが、それらが混じり合って爆発的に表立ったのが2020年ではないでしょうか。
声優も次々とYouTubeデビュー。その中でも個性が飛び抜けているのは、個人的に夏川椎菜(417Pちゃんねる)だと思っています。
その声優達の楽曲でも特筆すべきは、イヤホンズ『Theory of evolution』。「記憶」はサンプリングを中心とした前衛的な作品で、声優であるイヤホンズの3人によるセリフ調のリリックが効果的かつ心地よく混じっています。こんな化け物のような作品が2020年に生まれたことがとても嬉しいです。次のインタビューも必見。
一方で、私はあまりHIPHOPやラップを聴かなかった人間なのですが、ヒプノシスマイクの楽曲提供陣が豪華だったことに今さら気づいたのも今年です。「Creepy Nutsすげえ!」からの「SOUL'd OUTやべえ!」というように、10〜15年前に通過しておくべきだった必修科目をやり直してる感じです。2 Step(MJ Cole)やレゲエ(レッドスパイダーのZUM ZUM Channel)をかじったりなど、いわゆるブラックミュージックを広く浅く入門したりしました。
最後に。今年のベストというには昔のアルバムですが、1980年リリースの山下達郎『RIDE ON TIME』がなんだかんだで2020年のベストアルバムだと思っています。海外で「King of City Pop」と呼ばれるのも納得ですし、個人的にも「いつか (SOMEDAY)」を繰り返し聞いていました。
藤原 惟