哲学のないビジネスやテクノロジーは失敗する
ビジネスにしてもテクノロジーにしても、「何が本質か」という問い、すなわち哲学がイノベーションにおいて最重要だと思います。
例えば、IoT (Internet of Things; モノのインターネット)。 ビジネス誌では毎日のように目にすると思いますが、それが何で、どう重要なのかを実際に考えた人はあまりいないと思います。
モノのインターネット(Internet of Things、IoT)は、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され(単に繋がるだけではなく、モノがインターネットのように繋がる)、情報交換することにより相互に制御する仕組みである。それによる社会の実現も指す。
IoTの本質はハードウェアではないと僕は思います。
ハードウェアは確かに土台にはなりますが、安く買いたたかれうる交換可能な部品にすぎません。 (こんなことを言うと電機メーカー方面から叩かれるかもしれませんが……)
僕は、IoTの本質は「モノに関する情報の流通」だと思います(これ自体も、個人的な仮説です)。
Twitterで、あるIoTに詳しい方はこうおっしゃいます。
フィクションで現実の団体または個人とは全く関係ない話なのですが、IoT系の話題で、新しいことをする会社は話を聞く価値はまずなく信用にも値しない。ではどんなのを?と聞かれたら、例えば鶏小屋に足を向けるやつは、一緒に組む価値がある。
— >ω< (@u_akihiro) July 8, 2016
(以下はu_akihiro氏とは関係無い、僕の見解です)
鶏小屋では何があって、出荷までに何をして、どういう問題があるか。 (これを知るための一連の作業が、例えば今で言うデザイン思考です。参考: デザイン思考の概要を15分で学ぶページ)
- 鶏小屋でいい鶏を育てるには、ストレス測定が必要かも知れない。
- あるいは、広い牧草地に放し飼いをするなら、新たな鶏の管理手法が必要かも知れない。
- 消費者目線では、鶏の発育状況や飼育者の情報が見られたら(=トレーサビリティ)、食の安心安全に繋がるかもしれない。
このようにIoTは、実在するモノに関するかなり具体的な問題について、「モノに関する情報を、まとめたり蓄積したり編集したり流したりする」という機能があると思います。 (もちろん、それだけではないと思いますが。)
だから、「全く新しいことをIoTで考える」ということは、大方はナンセンスに終わると思います。
ただし、哲学をし続けて、本当に全く新しい領域を開拓して続けている人がいます。その一人が、MIT Media Labの石井裕先生です。
例えば、上記の記事にある石井先生の言葉は、IoTも含めて近年における情報の本質を掴んだものだと思います。
情報がフローズンだった時代が終わり、いまや流水となりました。 水が蒸発し、雲になって雨になり、やがて川になるように、情報も循環していく。 そうしたエコシステムの上流を抑えたのがGoogleであり、Amazonであり、Appleです。
また、石井先生と同じ分野の若手研究者であり、同じくビジョン駆動で考える方として、筑波大の落合陽一先生もいらっしゃいます。 彼の著書も強くお勧めします。
- 作者: 落合陽一
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このように、IoTに限らず、何かイノベーションを起こそうとするのであれば、
- それは何であるか?
- それは本質としてどのような役割があるのか?
- 我々は暮らしや社会や地球をどうしたいのか?
などの問いがなければ、失敗に終わると思います。
藤原 惟